「動物愛護」英語で言えますか?
こんにちは。緊急事態宣言後、初の日曜日が終わりました。今日からまた一週間が始まります。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
今日のテーマは、「動物愛護」英語で言えますか?です。
「簡単簡単。animal welfare(アニマルウェルフェア)でしょ?」
って思った方、ありがとうございます。
日本では、動物愛護の英訳はanimal welfareであるとされています。でも、これ実は、正しいようで正しくないのです。
海外で言うanimal welfareと日本の動物愛護は少し違います。
animal welfareを正確に訳すと、動物福祉です。動物愛護ボランティアの一部の人はよく、「日本は動物愛護後進国だ!」と言います。ところが、動物福祉後進国だ!と言う人はほとんどいません。まぁ実際、法律も「動物の愛護及び管理に関する法律」ですからね。
日本の動物愛護推進派の方々の主たる主張は、「殺処分ゼロ」「とにかく殺すな」です。そこには、動物福祉のニュアンスはほとんど入っていません。
まず、動物福祉という言葉について。
動物福祉・・・動物が精神的・肉体的に十分健康で、幸福であり、環境とも調和していること(公益社団法人 日本動物福祉協会)
世界的には、「5つの自由」として基本的な考え方がまとめられています。
1.飢えと渇きからの自由
2.不快からの自由
3.痛み・傷害・病気からの自由
4.恐怖や抑圧からの自由
5.正常な行動を表現する自由
です。表記については、(公社)日本動物福祉協会にならっています。
「殺処分」について、詳しくはまた別の回で書きたいと思いますが、この殺処分の中には、動物福祉を守るためのものも含まれます。例えば、「痛み・傷害・病気からの自由」です。
例えば、交通事故に遭い、内臓が飛び出したような犬や猫が保健所(動物愛護センターや動物管理センター等を含む)に収容された場合、どうでしょうか。
動物病院を受診し、奇跡的に一命を取り留めたとしても何百万円もかかるような治療行為を行政が行えるか、もちろん答えはNOです。当然のことですが、行政は税金で運営されているからです。では、今にも死にそうで苦しそうにしているその子たちをどうしてあげるのか。
行政が「殺処分ゼロ」を無理矢理達成しようとすると、こういった子たちについては自分たちが手を下すことなく、自然に死んでくれるのを待つようになります。というのも、最近の環境省の分類では、収容中の病死等については、他の殺処分とは別に計上出来るんですね。
僕は在職中、「僕たちは動物福祉を重んじるべきだ」と主張し続けてきました。とにかく生かせばいい、殺処分しなければそれでいい、それは行政職員としては恥ずべき行為だと主張し続けてきました。結果的に、動物愛護団体の方々に受け入れられず、僕は退職に追い込まれたわけですが…。動物福祉を守るためには、時には安楽死という選択をするべき時もあるのです。
動物愛護というのは、命を大切にしようという考え方、つまり思想的な部分、動物福祉は一定の科学的根拠に基づいたものです。いつまでも「動物愛護」ばかり主張し続けていては、動物たちに対して人間のエゴの押し付けになりかねません。
科学的根拠に基づいて動物の福祉について考える、これは「動物を大切にしよう、殺処分反対」といういわゆる「動物愛護思想」の一歩前を行く考え方です。動物愛護と動物福祉、何となく違いについてはご理解いただけたでしょうか。
もちろん、動物愛護啓発が不要だと言っているわけではありません。
「本当に飼えますか?本当にその子が生涯を全うするまで面倒を見てやれますか?」
譲渡希望者に対して僕がいつもしてきた問いかけです。
ボランティアや動物愛護団体、そして動物行政も頑張っています。それでも、限界はあります。憎むべきは、無責任な飼い主や、無責任な餌やりです。蛇口を閉めないことには、いつまでたっても不幸な動物が減ることはありません。
不必要な殺処分がない世の中にするために、僕たちが出来ることは何か。
まずは、今飼っている動物をめいっぱい抱きしめてあげてください。この子たちを自分は生涯大切にするんだ、そう誓うことが、明るい未来への第一歩なのかなと僕は思います。